HIRO Vol.6

波乗りという、自分が本心で打ち込めるものと出会い、それにのめりこむうちに何人かのカッコイイ奴らと出会うことができた。俺が言うカッコイイ奴とは内容のある奴、好きなことに打ち込む奴、群れに付いていくのではなく、先頭を切り開いていく奴、そんな内面が外面ににじみ出て、輝きを放っている奴、それでいて、アホで思いっきり笑う奴らである。
俺には、ある種のセンサーみたいなものが身体に備わっているらしく、そういう類いの奴らに接すると、ゾクッとする。俺は、カッコイイ奴らが好きだ。それは、彼等と接することは言ってみれば未知との遭遇のような冒険にも似た感覚であり、自分自身を磨く体験となりえるからだ。世間でいくらカッコイイといわれる人物でも俺のカッコイイ理論にあてはまるかどうかは不明である。そりゃ、当然で、そ-らカッコイイだろ、というふうに作られた断片だけを見て判断なんてできないからね。それに、俺は別にカッコイイ、男前を鑑賞するのが好きなわけではないのである。そうではなくて、カッコイイ奴との交流やその魂の構造を垣間見るのが好きなのだろう。それには、会ってみなければなにも始まらないのであるが、そのためには自分を磨き続けることが大切であると思っている。出会いは、楽しい未知との遭遇であるが、一瞬の勝負でもある。只のミーハーとしてカッコイイ奴と会うことになんて何の興味も無い。
前置きが長くなった。当時、俺の回りのカッコイイ奴らの話しの中にたびたび登場するHIROという人物と、とうとう出会う時がやってきたのだ。突然に。J.Tと俺は、阪急梅田でおちあってHIROと待ち合わせている喫茶店へと向かった。
俺は、クールを装いながら、もちろんドキドキしてたよ。俺が渋いなと思う奴らが口をそろえて、その名を口にするHIROとは、いったいどういう人なんやろ? 待ち合わせの喫茶店に着き、その扉を開く。
『まアいど』いきなり、であった。なにかもっと構えたものを想像していた。スゴイといわれる人物は、もっとエラそうに登場するのかと思っていた。増して年上だし。着慣れたTシャツにLEVIS、HIROは始めて会った時からカベを感じさせなかった。極めて普通の初対面の連れ的に俺を溶け込ませてくれたのだ。やがて、話題は俺のアメリカ留学のことについてになった。
HIROは言った、「お-え-こっちゃ。いっとかなあかん。そやけどお前、むこう行ったら今までの自分にこだわらんと新しい自分になったと思てやったほうがええで。」
人生の中で、記憶に残る言葉というものがある。感銘を受けた書物の中に綴られたたった一行の言葉、或いは、感動した映画の中で語られた言葉、そして自らの人生の上で人間どうしのナマの触れあいの中で魂に届いた言葉。今から思えば、HIROが言ったこの言葉は、俺がこれから迎えようとするターニングポイントを裏からしっかり支え続けてくれていたのだ。そして、今でも意識をシフトすれば、まるでつい昨日のことのようにその時が蘇る。KOTODAMAは、いまでもまさに俺の魂の中で息づいているのだ。
"HIRO"完
